災害のための備蓄と言えば、まず思い浮かぶのが飲料水や食料ではないでしょうか。しかし、これらと同様に必ず備えておかなければならないものがあります。それは、非常用トイレ(簡易トイレ・携帯トイレ)です。
災害によって断水が起こると、備えつけの水洗トイレは水道が復旧するまで使えなくなります。そんなとき、非常用トイレの備えがなかったら…。排泄は我慢できないものです。無理に我慢しようとすれば、膀胱炎や感染症の原因にもなり得ます。
また、トイレの回数を減らすために水分摂取を控えることで、災害関連死の一因でもある熱中症のリスクも高めてしまうのです。
本記事では、もしもに備えるトイレ備蓄の考え方や断水を考慮したうえで備えておくべき衛生用品について解説しています。防災士が実際に試した非常用トイレ・衛生用品のレビューもあるので、ぜひ備蓄選びの参考にしてみてください。

原田 怜果
本記事にて紹介している商品情報は2025/5/1時点のもので、商品リニューアル、価格変更、製造・販売中止、在庫切れの可能性もありますのでご注意ください。
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非常用トイレ(簡易トイレ・携帯トイレ)はどの程度用意しておくべき?
防災備蓄はよく「最低3日、できれば1週間は家族全員が生き延びられる程度が適当」などと言われますね。しかし、非常用トイレに関しては、防災士としては常々「最低でも1週間分の備え」をするようにお伝えしています。
というのも、大災害が起こった際、電気・ガス・水道のインフラのなかでもっとも復旧に時間がかかるとされているのが水道だからです。トイレに水が流せる状態になるまで、基本的に備えつけの水洗トイレは使えません。
しかも、特定非営利活動法人日本トイレ研究所の調査によれば、東日本大震災において、発災から3日以内に避難所に仮設トイレが設置された自治体は、わずか34%だったのです。14%の自治体では、仮設トイレが到着するまでに1ヶ月以上もの期間を要しており、避難所に行ったからといってトイレが使えるとも限らない、という現実が見えてきます。
排泄を我慢することは、命の危機にもつながります。飲料水や食料と同様に、普段から非常用トイレの備えも徹底しておきたいですね。
成人1人当たりの1日のトイレの回数は、約4~8回と言われています。小さな子どもは大人よりも膀胱が小さいため、1日のトイレの回数はこれよりもずっと多くなります。1日のトイレの回数から考えると、1人当たりの非常用トイレの個数(1週間分)は、以下の通りです。
年齢 | トイレの回数 (1日当たり) |
非常用トイレの必要個数 (1人当たり/1週間分) |
---|---|---|
1~2歳 | 8~12回 | 84回分 |
3~4歳 | 5~9回 | 63回分 |
4歳以降 | 4~8回 | 56回分 |
また、非常用トイレには、おもに次の3つのタイプがあります。それぞれ、用途に合わせて必要な個数を用意しましょう。
1.そのまま使える携帯トイレは防災リュックのなかへ
1つ目は、排泄袋・凝固剤・消臭剤などが1セットになっており、場所を選ばずそのまま使えるタイプの携帯トイレです。多くの商品は5回分1セットとなっており、成人なら1アイテムで約1日分を賄えます。携帯トイレは持ち運びに便利なので、1~3日分を目安に防災リュック(一次持ち出し品)のなかへ入れておきましょう。
2.便器がなくても使える簡易トイレは二次持ち出し品として
2つ目は、移動式や組み立て式の簡易トイレと、携帯トイレがセットになったタイプです。簡易トイレに排泄袋をセットすれば、便器に座るように排泄ができます。
前述の通り、避難所に行ったからと言ってトイレが十分にあるとは限りません。3日~1週間分の携帯トイレと一緒にして、簡易トイレは二次持ち出し品に備えておくと便利です。
3.便器に設置して使う携帯トイレは在宅備蓄に
3つ目は、自宅に備えつけの水洗トイレに設置して使用するタイプの携帯トイレです。50回分、100回分などと大容量のものが多く、自宅のトイレでも使えるため在宅備蓄に向いています。1週間~1ヶ月分を目安に備えておきましょう。
一次持ち出し品・二次持ち出し品・在宅備蓄についての記事はこちら非常用トイレ(簡易トイレ・携帯トイレ)の選び方3つのポイント
このように、一口に非常用トイレと言ってもさまざまな種類があります。備蓄品として何を買ったらよいか迷ったときには、次の3つのポイントを確認してみましょう。
【ポイント1】1回当たりの吸水量が多いものを選ぶ
非常用トイレ1回当たりの吸水量が多ければ多いほど、トイレの交換回数は少なくなります。すなわち、それだけ備えておくべきトイレの必要個数を減らせるということです。
吸水量が明記されていない場合は、トイレ1回当たりの凝固剤の量がなるべく多いものを選んでください。ちなみに、成人の1回分の尿を固めるのに必要な凝固剤は約6gが目安となります。
【ポイント2】防臭力が高いものを選ぶ
各自治体では、発災から3日以内をめどにゴミ収集の再開を目指すところが多いようです。しかし実際には、災害規模が大きければ大きいほど行政や自治体の手はなかなか災害現場に届かず、東日本大震災では10日に1回のゴミ収集となっていた場所もありました。
ゴミ収集が再開されるまでの間は、排泄物はゴミとして自宅で保管することになります。レビューや口コミなどを見る際は以下のような点に着目し、できるだけ防臭力が高い製品を選択しましょう。
-
防臭機能の高さが客観的データで示されている
-
排泄袋が厚手でしっかりしている
-
排泄袋とは別に防臭機能付きの処理袋がついている
【ポイント3】汚物を衛生的に処理できるものを選ぶ
水やせっけんが不足しがちな災害時は、清潔や衛生を保つのが非常に困難です。このような状況下では感染症の危険性も高まるため、汚物を素手で処理するのはNGです。
非常用トイレには、汚物を衛生的に処理できるよう、使い捨ての手袋がセットになっているものもあります。処理の仕方にまでしっかり配慮できている製品を選択するのも、重要なポイントの1つです。
非常用トイレ(簡易トイレ・携帯トイレ)・衛生製品おすすめ10選|プロが試してレビュー
ここからはおすすめの非常用トイレ(簡易トイレ・携帯トイレ)・衛生製品を紹介します。また、とくに気になった商品を防災士が実際に試した感想も紹介しますので、ぜひ商品選びの参考にしてみてください。
今回のご紹介の商品以外にも
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1.介護用だから強力消臭!「ドクターズ.one」

ドクターズ.one
ポータブルトイレシート 30枚
価格(税込):3,608円※検証時
介護用品として日常的に使うことが前提のため、高い吸水力と防臭力が魅力。簡易トイレ(ポータブルトイレ)に設置して使うのがおすすめです。
大容量かつ吸水力バツグンで、在宅備蓄におすすめ

1つで約1,000mlも吸水できるシートが30枚1セットになった大容量タイプ。吸収回数の目安は約7回分です。
成人の1回の尿量は200~400mlほどと言われているので、1シートで2~5回ほど使えると思っておくとよいでしょう。
介護用として日常的に使うことが前提となっている商品のため、防臭力が高いのもうれしいポイントです。
簡易トイレ(ポータブルトイレ)との併用がおすすめ

備えつけの便器に設置して使うことも可能とのことで実際に試してみたところ、400mlの擬似尿を注いだ時点で、固まった尿の重みでシートが便器内に落ちそうな状態になりました。それだけ尿は重いので、1シート当たり1,000mlもの吸水機能をしっかり活用するには、災害時も簡易トイレ(ポータブルトイレ)に設置して使うのがおすすめです。
2.大判ながらコンパクトで持ち運びにも便利「ケンユー」

ケンユー
ベンリーポンチョ 1枚入
価格(税込):657円※検証時
透け感のない大判サイズで、非常時、トイレや着替えの際の目隠しに便利。冬は防寒具として活用するのもおすすめです。
プライバシーを守るため、防災リュックへ必須のアイテム!

透けにくい素材でできており、非常時のトイレや着替えなどの際に重宝します。
避難所では、発災直後はとくに、トイレが十分な数なかったり、着替える場所が用意されていなかったりするケースも少なくありません。
コンパクトで軽量なので、必ず防災リュックに入れて欲しいアイテムの1つです。写真では大きさ比較のためライターを隣に置いて撮影しました。
冬場は防寒具としても優秀

身長164cmの私が頭からすっぽりと収まる大判サイズ。ビニール製で薄く軽いものの、風を通さないため、1枚羽織っているとかなり温かさが感じられます。冬は防寒具として防災グッズに加えておくのもよいですね。
3.災害時の防臭アイテムとして優秀!「matsukiyo トイレに流せる固まる紙の猫砂」

matsukiyo
トイレに流せる固まる紙の猫砂 10L
価格(税込):877円※検証時
安価で凝固剤や消臭剤の代替品として優秀な猫砂は、防災アイテムとして、ペットを飼っていないご家庭にも備蓄をおすすめしています。
大容量で保管に便利なチャック付き!

10Lの大容量サイズで、保管にも便利なチャック付き。猫砂と45L以上のゴミ袋(できれば防臭機能付きポリ袋も)さえあれば、自宅に備えつけの水洗トイレで簡単に簡易トイレがつくれます。
猫砂は凝固剤・消臭剤の代替品として優秀なので、ペットを飼っていないご家庭でも防災アイテムとして備蓄をおすすめしています。
トイレに流せて衛生的!

マツキヨの猫砂は、トイレに流せるところもGoodポイント!水道が復旧しさえすれば、保管していた汚物は猫砂と一緒に水に流せます。
実際の災害時には、写真のようにおもちゃや園芸用のスコップを添えてトイレ脇に置いておき、45Lのゴミ袋をトイレに設置し、排泄したら猫砂をかける、を繰り返すと快適に使えます。
4.災害時、簡易トイレや防寒具など多用途に使える「matsukiyo 結べるごみ袋」

matsukiyo
結べるごみ袋 45L 30枚
価格(税込):470円※検証時
結んで運べるため、何かと便利な大容量のゴミ袋。災害時にはゴミ袋としてだけでなく、給水タンクや防寒具などとしても活用できます。
大容量かつコンパクトサイズで防災グッズとしても優秀

matsukiyoシリーズのゴミ袋やポリ袋は、たっぷり入っているのにコンパクトにまとめられ、かつ取り出しやすいので、普段から防災アイテムとしてよく提案しています。大きさ比較のためライターと撮影しました、この通りコンパクトです。
結べるタイプはとくに使い勝手がよく、おすすめです。
多用途に使える45L以上のゴミ袋は、普段から備蓄に加えておこう

45L以上のサイズだと、写真のように便器に設置して簡易トイレを自作できるので、猫砂とセットで備蓄に加えておくのがおすすめ。
ゴミ袋はそのほか、防寒着や給水タンクの代用としても活用でき、災害時には重宝するアイテムの1つです。
5.医療メーカー開発だから高機能防臭「matsukiyo おむつが臭わない 高機能防臭袋」

matsukiyo
おむつが臭わない 高機能防臭袋 200枚
価格(税込):1,408円※検証時
おむつ以外に、サニタリーや生ゴミの処理などにも幅広く活用できる高機能の防臭袋。1枚ずつ取り出しやすい設計で、普段使いにも便利です。
強力防臭で、200枚の大容量もうれしい

医療メーカーが開発した商品で、手軽に強力防臭。臭い対策として消臭・防臭アイテムは必須の防災アイテムの1つとなります。暑さが厳しく臭いが発生しやすい時期にも活躍します。
200枚入りと大容量のため、おむつや汚物だけでなく、サニタリーや生ゴミの処理などあらゆる用途に使えます。
1枚ずつ取り出しやすく、普段使いにも便利

写真のように片手でも1枚ずつ取り出しやすい設計になっており、普段使いにも非常に便利。外出時にも使いやすいです。
自家用車がある人は災害時、車中泊という選択肢も考えられますので、そのほかの防災グッズと一緒に自家用車に保管しておくと安心感が違いますよ。
6.災害時の衛生対策に「matsukiyo ポリエチレン手袋L」

matsukiyo
ポリエチレン手袋L 100枚
価格(税込):382円※検証時
水やせっけんが不足しがちな災害時は感染症予防のため「汚物や食べ物には素手で触らない」が鉄則。使い捨て手袋は、必ず防災グッズに加えておきましょう。
災害時は「素手で触らない」が鉄則

水もせっけんも不足しがちな災害時は清潔を保ちにくく、常に感染症のリスクが伴います。そのため、汚物を処理する際には必ず、写真のように使い捨て手袋を使い、素手で行わないようにします。
調理などで食べ物に触れる際も、使い捨て手袋があると安心です。
誰でも使いやすい大判のLサイズ

災害時の衛生対策の観点から言えば、Lサイズの大き目設計でワイドな形状になっているため、着脱がスムーズな点もGoodポイント。
実際に使用してみると写真のように少し指が余る程度なので、手の大きさにかかわらず幅広く利用できそうです。
7.防災備蓄にはティッシュよりも水に流せるトイレットペーパーを「matsukiyo やわらかシャワートイレット」

matsukiyo
やわらかシャワートイレット 1.5倍巻き ダブル スクエアロゴ 34.5m 8R
価格(税込):437円※検証時
機能性とデザイン性を兼ね備えたトイレットペーパー。防災備蓄として保管しておくと、気持ちも明るくなりそうです。
気持ちが明るくなるようなクリエイティブなパッケージデザイン

matsukiyoのデザインが鮮やかなパッケージのトイレットペーパーです。やわらかシャワートイレットのシリーズ商品は、トイレットペーパーながら世界的なデザイン賞を5つも受賞!普段から防災備蓄にはティッシュよりも水に流せるトイレットペーパーをすすめていますが、せっかく選ぶならユニークでインテリア性もあるものがよいですね。
ダブル・1.5倍巻き長尺タイプで機能性も充実

やわらか素材でしっかり使えるので、機能性も申し分なし。
トイレットペーパーは、つぶすと写真のように簡単に芯を取り出せます。芯を抜いたら、中心からスルスルとペーパーを取り出して必要な分だけちぎれば、ティッシュがわりに活用できますよ。
8.甘すぎないスウィートピオニーの香りで拭き心地もさっぱり「matsukiyo フェムリサ」

matsukiyo フェムリサ
エニーシート スウィートピオニー 24枚 (6枚×4包)
価格(税込):547円※検証時
断水でお風呂に入れないときにも、気になるVIOの臭いや不快感を軽減できます。使用後はそのまま水に流せて、持ち運びにも便利な個包装タイプなので、普段使いにもおすすめ。
水分含有量が多く、さっぱりとした使用感

災害によって断水してしまうと、長期間にわたりお風呂に入れないことも…。そんなときでもVIOの気になる臭いや不快感のケアができるとほっとします。
水分をしっかりと含んでおり、さっぱりとした使用感なのも個人的にはよかったです。
個包装で衛生的にも安心

1パック6枚入りが4パックセットに。災害時にも衛生的で使いやすいな、と感じました。
使用後はそのまま水に流せるので普段使いもしやすいです。もしもに備えて、いつものバッグに1つ入れておくのもよいかもしれません。
9.しっかり拭けて肌にもやさしい「matsukiyo トイレに流せるおしりふき」

matsukiyo
トイレに流せるおしりふき 70枚
価格(税込):327円※検証時
アルコールや香料を使っておらず、ヒアルロン酸が配合されているため、肌が弱い人でも使いやすいアイテムです。
厚手のシートでしっかり拭ける

しっかりとした素材の厚手のシートが、たっぷり70枚入り。しかも、1枚1枚が水分をたくさん含んでいるので、拭き残しを感じさせない使用感がGoodポイントでした。
トイレやお風呂が使えない断水時など、重宝しそうです。
アルコールや香料不使用で、肌にやさしい

アルコールや香料は使っておらず、緑茶エキスと保湿成分のヒアルロン酸を配合。さっぱりとした使用感が心地よかったです。
肌が弱い人でも使いやすく、アウトドアやスポーツの際にも活躍しそうです。
10.1回使い切りで衛生的!携帯にも便利「オカモト」

オカモト
使い切り どこでもシャワー おしりキレイ 120ml
価格(税込):202円※検証時
衛生的で誰でも簡単に使用できる使い勝手のよさが魅力。コンパクトで持ち運びにも便利なので、防災リュックに入れておくのもおすすめです。
1回使い切りで衛生的、誰でも簡単に使える

使い切りのおしり洗浄器です。1回使い切りで清潔な点が、まず災害時の衛生対策用品として魅力です。洗浄液はたっぷり120ml入っているので、使用後は不快感をかなり軽減できます。
また、洗浄液のボトルにノズルをつなげば誰でも簡単に使用できる、使い勝手のよさもおすすめポイント。やわらかい洗浄液のボトルで水圧を調節しやすいです。
コンパクトで持ち運びにも便利

コンパクトで持ち運びにも適していますので、もしもに備えて防災リュックや日常使いのバッグに入れておくのもおすすめ。断水時にも活躍しそうですね。大きさ比較のため、ライターと撮影しました。
普段使いなら、アウトドアやキャンプ、旅行に持っていくのもよさそうです。
今回のご紹介の商品以外にも
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よくある質問
ここからは非常用トイレについてよくある質問に専門家が回答します。
非常時のトイレについて事前に用意をしておくために役立つ情報なので、参考にしてみてください。
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水道が止まっても、バケツなどを使って水を勢いよく流せば便は流れますよね?
一時的な断水時には、大量の水を一気に流し込んで汚物を押し流す方法もあります。しかし災害時には、排水管が破損している可能性が高く、その場合は、水を流すことで汚水が逆流したり便器から溢れ出たりすることがあります。
そのため、水道が完全に復旧したことが確認できるまでは、水を流さず非常用トイレを利用するのが賢明です。
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非常用トイレで大便をしたときにはどうしたらいいですか?
非常用トイレは、既定の吸水量の範囲内であれば、排尿の際には複数回使用してもかまいません。ただし、大便の際には必ず、都度排便袋を交換するようにしてください。大便を放置したままにすると、感染症のリスクを高めるためです。
また、汚物の処理は素手で行わないように注意してください。
本記事にて紹介している商品情報は2025/5/1時点のもので、商品リニューアル、価格変更、製造・販売中止、在庫切れの可能性もありますのでご注意ください。
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